ウィークエンド・シャッフル

筒井康隆氏著

ウィークエンド・シャッフル(講談社) 
 
佇むひと
如菩薩団 
「蝶」の硫黄島 
ジャップ鳥 
旗色不鮮明 
弁天さま 
モダン・シュニッツラー 
その情報は暗号 
生きている脳 
碧い底 
犬の町 
さなぎ 
ウィークエンド・シャッフル 
 
他にも筒井氏の作品は持っているけれど、たまたま実家から持って帰ってきたのがウィークエンド・シャッフルだったので「なんかいいよね」禁止で、読み返してみた。 
 
①さりげなく、少しずつ引き込む。 (自然に設定を飲み込める。)
 
佇むひと、では一見ごく普通の世界(日常)の描写のようにスタートするが、突如知らない単語が飛び出す。 「犬柱」「骨柱」「猫柱」「人柱」その正体とは。 
冒頭の「毒や薬になるものが書けない時勢」である理由が、だんだんと明かされていく。解けていく快感があり、一気に読みたくなる感覚を呼び起こす。 突拍子もない設定のように思えて、でも、こんな未来もあり得なくないかも、と怖くなるような感じがある。 
 
②カオスなドタバタ、スピード感。 
 
旗色不鮮明、声を出して笑ってしまうほど面白い。 
 
 
 「その前に、うかがっておきたいことがあります」 
隊長らしい男がかちりと靴の踵を揃えて直立不動の姿勢をとり、切口上でおれを睨み据えた。 
「あなたは自衛隊を合憲とお考えでしょうか。それとも違憲とお考えでしょうか。ご自分の意見がおありの筈です。それを承りたい」 
おれはまた、一瞬唖然とした。 
「あの。それを言わないとあの、爆弾を処理して貰えませんか」 
「言わなくてもよろしい」 
ヴェランダから、警察の連中がなだれこんできた。 
「わたしたちが処理します」
 「や。こいつら。おれたちの縄張りを」 
「何をお前らこそ」 
(102ページ11行~引用) 
 
このドタバタ感、氏の作品を読む醍醐味だと私は感じる。この後ラストのクライマックスにかけて、さらにドタバタ、カオス度が高まっていく。 
 
③たたみかけるようなリズム感 
 
-ー「筒井の○○○○は軽薄な作品である。同じ雑誌の同じ号に載っている○○氏の作品のまじめさを見ならうべきであろう」だからといって、ぼくがほんとにその作品のまじめさを見ならったとしたら、どうなると思う。軽薄さで売っているぼくがまじめな作品を書きはじめたら、たちまち原稿の依頼はなくり、食うに困り、女房は寒い風の吹く街頭に立たなければならなくなり、ぼくはポン引きに身を落とし、可愛い餓鬼は餓えて死ぬのである。 (ウィークエンドシャッフル あとがき266ページ8行~12行より引用) 
 
こんな①②③みたいなところが好き、面白いと感じていたんだなぁと、分析。
コピーに活かせるものは活かそう。
 
 
 作品とは関係ないですが…
「トップの椅子は3つまで」という業界の法則の紹介をしていたTV番組で…
「SF業界でもビッグ3で三人ですね。星新一先生、小松左京先生、そして筒井康隆先生」と言われての筒井氏の回答が…
 
「2人死んだからあと2人いけるで」
 
こういう返しがすぐに出てくるところが、氏の才能なんだなぁと、ニヤニヤしてしまった。ブラックで、でもズバッと本質をつくところが素敵です。